第11回世界計算力学会議(WCCM)出張報告 (おまけ)
東京大学生産技術研究所
鵜沢 憲
あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ
本年7月20日(月)から25日(金)までの5日間、スペインのバルセロナにおいて開催された、第11回世界計算力学会議(The 11th World Congress on Computational Mechanics, WCCM)に参加してまいりました。ここでは、その道中で起こったことを、編年体でお送りします。
渡航前
「OK、俺がウザワにレクチャーしてやるから“大丈夫”だ。」
バルセロナに発つ一週間ほど前、友達のイタリア人(マルコ)による、本格的なスリ対策の講義が始まったのでした。どうやら氏によると、単独犯から複数グループ(一見無関係と思われる複数人が実はグル!)による、バラエティ豊かなスリのパターンがあるようです。観光地に行く際には、財布は薄型を使用し、札の入り口を下にして前ポッケに入れる、そして定期的にポンポンはたいて確認せよ、とのことでした。
その後、自分でも少しネットで情報収集してみると、上記のスリに加えてひったくり、さらには日本人を狙った「首絞め強盗」なる本格派もあるらしい。さすが港町!傾いてらっしゃる方々が沢山いらっしゃるようです。筆者はD3のときフランスの港町マルセイユに短期滞在したことがあり、そのときも目前でストリートファイトが始まるなど、こちらもたいがいでしたが、それを彷彿させる世紀末都市っぷりです。そう言えば、バルセロナはヨーロッパでも治安が悪いほうだぞ・・・と大学の先輩がtweetしていましたが、ちょっと想像以上な気もします。おいおい、大丈夫か?生きて帰ってこれるのか?
会議前日
世紀末都市バルセロナのエル・プラット空港には、会議前日の夕方6時半過ぎに到着しました。この時間でもまだまだ外は昼過ぎのように明るいのが、ヨーロッパの夏ですね。(この季節ですと、夜9時半にならないと日が完全に沈みません。)空港からホテルがある市街地まではタクシーで30ユーロ(4000円強)くらいで行けるらしいのですが、今回は空港から市街地までシャトルバス(5.3ユーロ)で行き、その後、流しのタクシーをつかまえてホテルに到着するというエコノミー作戦を採用しました。
その日はもう街に出るのはやめにして、ホテルで夕食(リゾット)を取ることに。バルセロナのシーフードのなんちゃらかんちゃらのリゾット、でしたが、これが美味すぎて悶絶しました(写真1)。その後値段が35ユーロと聞いて、さらに悶絶しました。ちなみに、このリゾットが美味しすぎて次の日も頼んだのですが、初日にチップを渡し忘れたせいで、具からニンジンさんがいなくなるなど、若干お野菜が少な目になっているのはご愛嬌です。(言うまでもないが、ネタじゃないぞ。)良い子の皆さんは、海外では必ずチップを渡すのを忘れないようにしましょう。
写真1:ディペンデンス・オブ・リゾットの具・オン・チップ。チップ有り(左)、チップ無し(右)。
会議初日~2日目
会場のホテルと会議場間をいそいそ。(ご興味がある方は、本体の報告書をごらんください。)
3日目
「バルセロナといったらパエリア」、「パエリアといったらバルセロナ」ですね!
ということで、5日間の会議も佳境を過ぎた3日目の夜に、パエリアを食しに市街地に繰り出すことにしました。会議場の最寄り駅は、地下鉄3号線終点のZona Universitaria 1) というところでしたが、そこから地下鉄で2駅のMaria Cristina 2) に、どうやら地元のみなさんも良く食べに行く美味しいパエリアの店があるということで、同業者に早速連れて行ってもらいました。
1) Zona Universitariaは英語ではuniversity zone, つまり大学エリアという意味です。
2) Maria Cristinaは、バルセロナで有数のショッピングエリアだそうです。ただし、場所によってはラオウが出没するような世紀末エリアがあるそうで、同行者によると、お前以外には行くのをおすすめしないとのことでした。
パエリアの種類は、具に応じて何種類か選べるようになっていましたが、店員や(勝手に割り込んできた)隣のオジサンの勧めに従い、最もスタンダードなものを選ぶことにしました。他にもイカ墨の真っ黒なパエリアなども美味しそうだったのですが、注文は2人前からとのことで、まずは1つだけ注文してみました。
外のテーブルでパエリアを待つこと15分、出てきました!(写真2)
写真2:ねんがんのパエリアをてにいれたぞ!
日本でも近年スペイン料理が浸透してきているようで、街中でバルの店もよく見かけるようになっているように思います。私も今年に入ってから(マルコに連れられて)何回かパエリアを食べていたのですが、当然ながら本物は日本で食べるのとは段違いに美味しかったです。シーフードのエキスがご飯に染み込んでおり、味の深みが違いました。また、エビやムール貝などの具が大きく、全体的に結構な量があり、結局、2つ目のパエリアには行けませんでした。
その後、偶然前を通りすぎた同業者を引きずりこんでしまいました。(申し訳ない・・・。)同業者はすでに夕食を食べたらしく、パスタを注文(写真3)。
写真3:同業者が頼んだパスタ。t=0で励起状態にある。
4日目
あろうことか夕食の待ち合わせ場所で同業者と出会うことができず、途方にくれる羽目に。失意の内にホテルへ帰ったものの、待てよ、「バルセロナといったらバル」、「バルといったらバルセロナ」だよな!? と気を取り直して、一人バルをすることにしました。申し遅れましたが、バルとは
「喫茶店と居酒屋と食堂が一緒になったような飲食店を指す。朝はコーヒーを、昼には食事とビール・ワインを提供し、夜はタパスやピンチョスといった小皿料理と酒を提供する店が多い。(Wikipedia)」のことです。
ホテルに聞いたところ、地元民が行くおすすめのバルが、地下鉄で14駅ほど先(Passeig de Gracia駅)にあるとのこと。・・・って、それってさっきの待ち合わせの駅じゃん!まぁ、とりあえず行ってみるか。ただ、待ち合わせ場所の近くのバルを眺めていたら、まだまだ店内が相当混んでいたので、11時ちょっと前まで出発の時間をずらすことにしました。
深夜の地下鉄は避けたほうが良いと聞いていましたが、ものは試し。冒険者の初期装備のような必要最低限の恰好と所持品で行ってみました。すると、3駅過ぎたあたりで4人のタトゥー漢達が乗ってきて、普通に車内で宴会が始まる始末。(小心者にして、写メを取る度胸がありませんでした)。お家に帰るまでが遠足です、をマントラのように唱えつつ、なんとかその場をやり過ごすことができたのは僥倖と言って良いと思います。その後、深夜のPasseig de Graciaを歩いていると、明らかに何かをやっていそうなふらふらした若者がいたり、怖そうなカップルがいたりというアトラクションは多少ありましたが、すぐにお店を見つけることができました(写真4)。
写真4:バルの外観(左)と内観(右)。営業時間終了までいたせいで、人がまばらに。
1人だったのであまり頼めませんでしたが、店員のおすすめを注文。また、ビールをレモンで割ったレモンビールが有名だそうで、こちらも注文(写真5)。
写真5:店員おすすめの一品(左)とレモンビール(右)。
もうやめて!とっくに財布のライフはゼロよ!
今回の出張における数々の余計な夕食により、数ヶ月分の私のお小遣いは無しになることはほぼ決定済みなのですが、それにしても美味しかったです。もう少し小品のタパスを色々と頼んでみても良かったかと思いました。レモンビールは思ったよりも飲みやすく、ミカンビールのような味わいでした。
その後、(見た目が)いかついタクシーのお兄さんに送られてホテルへ帰還。
最終日
「バルセロナといったらバルサ(以下略)
ということで、会議終了後にFCバルセロナ(通称バルサ)の本拠地スタジアムであるカンプ・ノウに行ってきました。カンプ・ノウは会議場から歩いていける距離にあり、15分程度で到着しました(写真6)。シーズンオフではありますが、運が良ければ東京西川所属のネイマールに会えたり、もっと運が良ければスアレスに突然噛みついてもらえるかもしれず、期待大です。
写真6:カンプノウに到着(左)。スタジアム横のバルサのオフィシャルショップ(右)。
「だいたいバルサは貢献度高いサンチェスをアーセナルに売るなんて、どうかし過ぎ。確かにスアレスはいいけど、メッシもネイマールもいるし、年間20ゴール10アシスト、ついでに5バイトくらいできれば御の字だろ。まぁ、チャンピオンズリーグ獲った立役者のディマリアが妖怪に似てるってだけで他チームに売りたがるマドリーもたいがいだけどな。いずれにせよ、両チームとも人気選手を集めてユニフォームを売ることしか考えてないんだよな。」
と、回りが日本語を分からないことをいいことに毒づきながら、店内を2時間もぶらぶらしたのでした(写真7)。バ、バルサなんて別に好きじゃないんだからね!
写真7:熱気溢れる店内(左)。写真撮影者がひっきりなしのオフィシャルユニ(左)。
そしてあろうことか、気がつくと“MESSI”と書かれたユニフォームを手にレジに並んでいたのでした(写真8)。
写真8:ユニフォームの順番待ち。ティキタカを思わせる流れ作業で進んでいきます。
帰国
お家に帰るまでが遠足です、をマントラのように唱えながら、無事に自宅まで到着しました。
バルセロナが危険ですって?いえいえ、普通の生活を送っていれば、バルセロナの民はみんないい人ばかりでした。昼間に街のお掃除のおじさんに、夕方に通りすがりの若い子に、夜の街で通りすがりのおっちゃんに道を尋ねましたが、皆さん親切に対応してくれました。確かに地下鉄でガタイが良い漢達による宴会等もありましたが、阪神が勝った日の阪神電車と比較すれば誤差の範囲内でしょう。誰ですか、世紀末都市とか言ったのは。罰として1スアレスの刑です。スリ対策として、ポッケにダミーの財布を入れておきましたが、これも徒労に終わったようです。なお、財布には「風呂入ったか」「歯磨けよ」「宿題しろよ」という紙も同封しておいたのですが、特に後悔はしていません。
完